CCRCという言葉をご存知でしょうか。CCRCとはContinuing Care Retirement Communityの略で、一口で言えば高齢者がリタイヤ後に暮らすコミュニティ。米国では歴史が古く、広大な土地にゴルフ場や住まい、サービス施設が点在し、ケア(介護)が必要になっても暮らせる街が形成されている場所がいくつもあります。
高齢者のための街というイメージが強かったCCRCですが、最近は、米国各地の大学が核となって、高齢者も学生もともに暮らす「多世代共生型」が増えてきているそうです。

日本でも、地方創生の一つの在り方として、CCRCという概念が広まってきました。ただ、外国のものをそのまま導入するのではなく、日本の国土や日本人の暮らし方に適した「日本版CCRC」が検討されています。そして、そのなかで「大学連携型」の多世代共生型コミュニティが登場しています。

今回、ご紹介するのは、「高齢者+学生+ファミリー」の多世代がそれぞれ暮らす住宅と桜美林大学が連携する仕組み、「“多世代共生型コミュニティ“桜美林ガーデンヒルズ」です。

桜美林ならではの「高齢者と学び」

桜美林ガーデンヒルズは、2017年4月に東京都町田市にオープンします。概要を下記の表にまとめました。

シニアの学習意欲は非常に高いのはご存知と思います。高齢者は学びたいだけでなく、何か社会の役に立ちたい、とも思っています。若者と違って、「学んで卒業して社会人になる」というわけではないから、なおさらなのです。しかし大学に通う、何か貢献できる場を探す、というのはなかなか骨の折れることで、意欲はあっても体力的に厳しくなって断念されていたケースもあるかもしれません。

また、高齢者は、単純に勉強したいだけでなく、若者と触れ合いたいと思っています。大きな括りの「大学」のなかに、高齢者の住まいがあることは、それだけでも高齢者にとって嬉しい場所のはずです。もちろん、ご本人が得意分野で講師ができる方も大勢いるはずですし、自分自身が学生の研究対象となることも喜んで協力する、という方もいるそうです。高齢者の「学び」の要素は複数ありうるのです。

桜美林大学は、日本で唯一、大学院に「老年学研究科」があり、リタイア世代も多く在籍していると聞いています。また、学部には健康福祉学群があり、社会福祉、精神保健福祉、健康科学、保育の4つの専修があります。高齢者にとっても若者にとっても最適の学習環境だと思います。

いっぽう、若者はどうでしょうか。高齢者の研究をしている若者ならばすぐにメリットや意義を感じることでしょうが、一般的にはまだまだお年寄りのことまで考えが及ばない世代。しかし、実際高齢者と接してみたときに、高齢者の深い知識と洞察に驚くでしょうし、若者の悩みの相談相手になってくれるかもしれません。高齢者と若者は互いに補完できる存在なのです。

そして、もうお気づきとは思いますが、高齢者が積極的に学ぶ場があって、若者と触れ合い、何かの役に立つ。これこそ、いつまでも元気でいる大きな秘訣なのです。

どんな方が見学に来ているか

今回、サービス付高齢者向け住宅の見学会に同席させていただきました。桜美林ガーデンヒルズは東京都の多世代共生型住宅として、株式会社ナルド(桜美林大学100%出資)と株式会社コミュニティネットとが共同で事業採択されたもので、都のモデル事業となっています。介護事業に関しては、株式会社日本介護福祉グループが参画しています。
すでに「町田友の会」というものがあり、住民参加型で、これからの住まい方をともに考えていく枠組みができています。

70歳代のご夫婦や、80歳代の独居の方など、訪れる方はさまざま。自宅を残したままセカンドハウスとして利用する方もいるそうです。
多くの方は「子供の世話にならず、元気なうちに移り住みたい」「若い世代と触れ合いたい」というご希望で、見学にいらしていました。また、近隣にお子さんの世代がもともと住んでいて、「近くに来てほしい」ということで見に来た、という方もいらっしゃいました。

若者との交流は、高齢者の方々もとても楽しみにしているようです。運営する㈱ナルドに伺ったところ、
『これから、お住まいになる方のご意見を聞いて、いろいろなことを企画していきたいです。学生がちょっとアルバイトまたはボランティアで高齢者のお手伝いをするなども予定しています。学生には強制でなく、自然にやりたくなるような形が望ましいと思っています。ただ、防災訓練は居住者全員で実施します。「救護用ベルガ」という、一人で持ち上げる担架があるのですが、この使い方を学生に知ってもらうのも良いかなと思っています。地震などの災害時、若い人がそばにいるのはとても心強いはずです。』

『100世帯というのはちょうどよい規模だと思います。定期的に懇談会や茶話会も行って交流を深めます。その中心となる交流棟は133㎡と広いものを計画していますので、いろいろなイベントが可能です。もちろん地域の方も利用できるようにします。この使い方も皆様で楽しんで考えていきたいと思っています。』

看護師常駐、将来を見込んで介護も充実していく

桜美林ガーデンヒルズには常駐の看護師を立ち上げ時から参加させ、オープン後は住み込みで居住者とかかわっていくそうです。
『サービス付き高齢者向け住宅は、本来、看護師は設置義務がありません。でもこちらは日中常駐、夜間は住み込みで入ります。そのため、健康診断書を提出いただき、皆様の健康管理をしっかり行っていきます。体のことはもちろんですが、ちょっとした悩みも聞いて差し上げられることが大切だと思っています。』

また、
『いまお元気でも、5年経つと変化してくると思うのです。それも考えて、看取りまでできるようにしていくべきと思っています。いずれ訪問介護の導入も考えています。』(㈱ナルド)

--取材を終えて--
高齢者と若者がともに住むということは、想像以上に化学変化が起きるかもしれません。それはすぐに目に見えるものではないかもしれませんが、間違いのないところでしょう。
おそらく、コミュニティのなかでは「高齢者」「若者」という区別もなくなっていくのではないかと思います。年齢にかかわりなく、ひとりひとりが「個人」としてかかわって自らの暮らしを作っていく。

ご関心のある方は、まだまだ見学会があるそうですので、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

この記事の筆者

荻野 百合子

シニアホームなび 運営事務局