2000年に介護保険法が施行され、介護は措置から契約(介護サービス)へ変わり、お客様が自由に選択できるようになりました。
そしてさまざまな民間企業が介護の業界へ参入してきました。
しかし、介護保険制度は3・5年周期で報酬・制度の見直しがあり、そのたびに新しい価格、新しいサービスが追加され、介護業界で働く人でさえも正しく理解している人は多くないのが現状です。ここでは老人ホームを運営してきた経験からお客様から誤解が多かった項目について出来るだけわかりやすく解説して行きたいと思います。

家賃(相当額)の支払い方法

今回は、家賃相当額の支払い方法について解説したいと思います。
前回、前払い金(入居一時金)は返還されない??というテーマで解説しましたが、前払い金は戻ってこないと誤解している人が多いのと同時に前払い金方式のホームは高いと思っている方が多いように感じます。

前回も触れましたが、前払い金は2012年4月の老人福祉法の改正によって入居時の費用は「 家賃、介護の提供、食事の提供、日常生活上必要な便宜の供与」のいずれかと規定されました。この改正によって、ほとんどの有料老人ホームの入居時費用は、想定居住期間分の家賃相当額です。
簡単に言えば、家賃を先に払うのが前払い方式、毎月支払うのが月払い方式ということです。
こう聞けば、どちらが高い・安いの問題ではないことがわかります。
下のグラフは、前払い方式と月払い方式で家賃相当額の支払いが累積でどうなっていくかを示したグラフです。
(条件は、前払い方式も月払い方式も家賃相当額は同額であること、前払い方式の場合の想定居住期間を5年(=60カ月)と設定していること、家賃は月10万円)
家賃として支払う金額は、58カ月目までは前払い方式が多く、59カ月目で同額となり、60カ月目で月払い方式の方が多くなり、以降は月払い方式は住み続ける限り、前払い方式よりも家賃相当額を多く支払うというグラフです。
また、前払い方式の返還金は、この場合住んだ月数(正確には日数)に応じた家賃相当額を除した金額となるため、結果的に月払い方式と同額になります。

日常的なところで例え話

ちょっと種類は違いますが、こんなサービスがあったらいいなという希望も込めて鉄道会社の電子マネー機能付き乗車カード(SUICA、Kitaca・TOICA・ICCOCA・SUGOCA、などなど)で例えてみます。
(物価上昇や経済環境変化に対するリスクヘッジ等は一切考慮していません)
例えば50歳男性Sさんのこれまでの月平均電車利用額が3,000円程度とします。(※各個人の就業や活動範囲によって額は異なる)
その時に以下の2つの方式を選択できるものとします。
①終身利用フリーパス
想定鉄道利用年数を50歳男性の平均余命や健康寿命等を勘案し、年数を設定します。仮に30年としたとき、3,000円×30年×12カ月=1,080,000円となり、これがこれから一生で利用する鉄道料金総額となります。
そして、今この108万円支払え(チャージ)ば、何歳まで利用しても追加で電車代は掛かりません。
※80歳までに利用がなくなった場合は、残チャージ金額が返金される。
②月払い利用フリーパス
毎月月末に3000円チャージして電車代を支払い続けます。

みなさんの日常的なところで例えてみましたが、かえってややこしくなったかもしれません・・・。例え下手とご容赦ください。
①が老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の家賃(相当額)前払い方式
②が同家賃(相当額)月払い方式
のイメージです。

まとめ

例話でみなさんの理解がより深まったと信じて、まとめに入りたいと思います。
高齢者であるAさまがBという前払い方式・月払い方式の両方がある老人ホームを気に入って入居したいと言う場合で本人やご家族の第一優先が支払い総額を抑えたいというケースでは、「前払い方式」をお勧めします。

しかし、単純に支払い総額が多いか少ないかだけで判断できるものではないことも承知しています。
入居対象者の財産がどのくらいあるのか?そしてそれは短期間で現金化できる財産なのか?年金等月次・年次の収入はどのくらいあるのか?また入居対象者のご親族からの支援が得られるのか?どのくらい得られるのか?それは継続的に得られるのか?期間が限定されるのか?などさまざまなケースによって適した支払方法があると考えます。

良い施設を見つけ、豊かな生活を過ごしていただいたのは良いですが、途中で支払能力がなくなり、退去を余儀なくされてしまうことが入居する本人にとってもそれを支えるご家族・ご親族にとっても一番怖いことです。

命の期限は誰にも予測できないということを踏まえて、無理のない支払いパターンを選択してもらいたいと考えます。その近道として、私達のような老人ホーム・高齢者住宅のプロフェッショナルをうまく活用することで、より良い選択が出来ると考えます。

参考文献

老人福祉法

この記事の筆者

蜂須賀 尊之

株式会社LIXIL住生活ソリューション シニア事業責任者

1966年 兵庫県生まれ

1989年 トーヨーサッシ株式会社入社
2003年 介護付マンション事業の企画担当となる
2006年 住生活グループ(現LIXILグループ)初の高齢者住宅・介護事業会社となる
「株式会社住生活グループシニアライフ」 立ち上げ
人事・経理・マーケティングの責任者として、会社の基礎を創り上げる
2010年 レジアス百道支配人、福岡3拠点統括責任者
介護現場に改善手法(QC活動)を導入・サービス品質の見える化を促進
2013年 拠点を超えた人事交流を推進
2014年 LIXIL高齢者の住生活相談センター/LIXILの居宅介護支援事業所 介護計画百道 開設
2015年 東京・福岡全7拠点統括責任者
2016年 株式会社LIXIL住生活ソリューション着任 シニアホームなび開設