施設見学をするとき、事前に予約した方が良いのか、いきなり行った方がありのままの姿を見られて良いのか、いろいろな意見があるようです。この機会に、「見学」について考えてみましょう。

介護付き有料老人ホームであってもサービス付き高齢者向け住宅であっても、どちらも、純粋な「住まい」ということにとどまらず、必ず「サービス」がついています。介護付き有料老人ホームであれば、食事介助、入浴介助、排泄介助という三大介護と日常の生活すべてのサポートがセットされています。サービス付き高齢者向け住宅では、状況把握・生活相談が最低限あって、介護は必要に応じて通常の在宅介護を選択して契約します。

いずれも「モノ(建物・環境)」と「サービス(人・仕組み)」を同時に選ぶ、という特徴があり、モノとサービスは密接に関連しています。老人ホームを選ぶ際に私共のようなアドバイザー(相談員)がお役に立つ理由がそこにあります。

では、おもに介護付き有料老人ホームを念頭に置いて考えてみましょう。

「施設のありのまま」は、まいにち違う

よくインターネット上で「施設のありのままを見たいから、いきなり訪問してもよいでしょうか?」というQ&Aを見かけます。事前に予約せず、いきなり訪問しても、建物はある程度判断が付くかもしれません。構造や木のぬくもり、庭、部屋の配置などが自分のイメージと合っているかどうかなどです。

「サービス」については、いきなりの訪問は、「普段の施設の様子が見られる」というのは確かにそうかもしれません。しかし、365日、施設にはいろいろなことが起きています。外出イベントの日もあれば、大勢の見学会を設定している時もあるし、急な場合は、ご入居者がホームで亡くなった・・・という日もあります。

もし、ありのままの姿を見るの目的であれば、1日だけの訪問は、施設の一側面しか見られない可能性があります。見学者にちゃんと対応できない日に当たったら、サービス面で良くない印象が残ると思いますが、それが施設のすべてではありません。(ちなみに、見学者が来るからといって、いつもよりきれいに掃除したり飾りつけをしたり、ということはまずありません。そのような余裕は実際、無いと思います。)

ほんとうは親御さんに合った施設なのに、もし、巡り合わせの悪い日にあたったせいで、選択肢から外れてしまったら、とてももったいない気がします。
見学のご希望があったら、施設側も自分たちの施設をきちんと見てもらうための最適なタイミングを考えますが、お互いの事情もあります。それでも、できる範囲でベストな日を選んだ方がよい、ということなのです。

「生活の場」に訪問するということ

施設は、それ全体が、入居者のための「住まい」という側面があります。玄関も廊下もトイレも浴室も庭もすべて住まいの一部です。普通のアパートやマンションのように、部屋だけで成立しているものではなく、すべてが生活の場です。

施設は、新たに入居するお客様も大切ですが、いま現在入居されている方を第一に考えているはずなので、急な見学者によってバタバタと職員の余裕がなくなり、十分な対応ができない、という可能性もあります。
また、重度の要介護者が多いホームではとりわけ気を遣っていると思いますが、冬場に「手を洗ってください」「マスクをしてください」などのことを見学者にも求める施設もあります。そうした施設のルールを、見学のお客様にもちゃんと伝えられる施設は、むしろ入居者視点が徹底しているとみることもできます。

ところで、運が良いと、実際に住んでいる部屋を見せてもらったり、会話ができる場合があります。(ケースバイケースなので、無理に要望したりしないようご注意ください)。ご本人が見学する段階であれば、これは入居決断のきっかけになったりします。

そうそう、時間に余裕があって、ご本人の体調に問題が無ければ、最終的にはご本人に見学してもらってください。ご本人が見て納得されることは、のちのち、ご家族にとって精神的にとても楽になると思います。ご本人の見学にあたっては、留意すべきポイントがありますが、それはまた別の機会にお話しできればと思います。

気持ちに余裕が無いときの訪問だからこそ

実際のところ、親御さんが老人ホームに入るような事態のときには、介護で疲れていたり、様々なことに振り回されて精神的に参っていることが多いと思います。通常ならちゃんとチェックできることが、たくさん見落としてきてしまった、という話はよく耳にします。

親御さん、またはご自分の終の棲家を選ぶという大仕事である「見学」は、限られた時間を有効に使って、大事なポイントを見極めなければいけません。相談員の見学同行を上手に利用してください。

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この記事の筆者

荻野 百合子

株式会社LIXIL住生活ソリューション シニア事業部 課長
ホームヘルパー2級、福祉住環境コーディネーター2級
早稲田大学卒業。
1986~2008 株式会社三菱総合研究所 勤務。 専門研究員として雇用労働・産業構造を専門に、ワークライフバランス、女性の就業等について官公庁調査業務を担当。厚生労働省 職業安定局の労働力需給推計業務を担当、独立行政法人 労働政策研修・研究機構の「労働力需給推計委員会」委員(2008~2015年まで)
2008~2013 医療系IT企業にて医療関連リサーチ業務、介護職員・看護師の満足度調査、介護施設のコンサルティングを担当。
2013~ 株式会社LIXIL シニアライフカンパニー入社。介護付き有料老人ホームフェリオ多摩川ホーム長就任、2014年より本部企画業務に従事
2016.4~ 株式会社LIXIL住生活ソリューションに出向 シニアホームなび 担当