2000年に介護保険法が施行され、介護は措置から契約(介護サービス)へ変わり、お客様が自由に選択できるようになりました。
そしてさまざまな民間企業が介護の業界へ参入してきました。
しかし、介護保険制度は3・5年周期で報酬・制度の見直しがあり、そのたびに新しい価格、新しいサービスが追加され、介護業界で働く人でさえも正しく理解している人は多くないのが現状です。ここでは老人ホームを運営してきた経験からお客様から誤解が多かった項目について出来るだけわかりやすく解説して行きたいと思います。

入居時(初期)費用は返還されない?

今回は返還金について解説したいと思います。
高齢者住宅、特に有料老人ホームでは入居時に入居金や入居一時金、権利金、前受金など(以下、入居時費用)の名称でまとまった費用が掛かる場合があります。
(この費用が有料老人ホームは、高額と思われる要因でもあります)
この費用は戻って来ないと思われていませんか?
 
それは大きな誤解です。
 
その誤解を招いた理由は過去の入居時費用の内容が不透明だったことに由来します。
今から約5年前の2012年3月以前は法的にも入居時費用について具体的に規定がされておらず運営会社の裁量に任されていた部分があったため、一般的には入居時費用の10~30%が初期償却、非返還金、権利金、権利保証金、保証金などの名称で入居したその日に償却(=運営会社のお金になる)されてしまっており、その後いつ退去しても返還されない費用(=非返還金)でした。
そして、退去となって場合の返還金は入居時費用から非返還金を引いた金額が対象となるため、3カ月住めば非返還金が戻ってこないことが老人ホーム業界では一般的でした。(3カ月以内の退去はクーリングオフが適用され、入居時費用の全額が返還の対象となります。ただし全額返還されるわけではありません。)
下図は、返還金のイメージを償却期間(=想定居住期間)60カ月として示しています。

老人福祉法の改正

2012年4月より改正老人福祉法が施行され、入居時費用としては「 家賃、介護の提供、食事の提供、日常生活上必要な便宜の供与」のいずれかであって、対応するサービス提供がない、権利金や入会金、礼金、保証金などは、その名称に関わらず受領することが禁止されました。
また、入居時費用については算定基礎を契約書・重要事項説明書などで明示することも必須となりました。
(※経過措置として2012年3月31日までに老人福祉法に基づく届出している事業所については2015年4月1日からの適用)
経過措置の期間も含め、2015年4月1日より有料老人ホームでは使途・用途が不透明な費用は実質なくなり、以前に比べお客様にとってわかりやすく、透明性が増しました。
下図が2012年4月以降の入居時費用の返還金イメージになります。
上図の2012年3月以前と比較すると非返還金がなくなり、入居時費用全額が返還の対象額となるという考え方に原則変わっているわけです。

まとめ

今も昔も一定の条件と計算式のもと、入居時費用は退去時に返還されます。
もともと入居時費用は家賃またはその一部の前払いという意味合いが強い金額です。 多くの有料老人ホームでは、家賃(またはその一部)×想定居住期間≒入居時費用となっているため、簡単に言うと想定居住期間が5年であれば5年分の家賃(またはその一部)を、7年であれば7年分の家賃(またはその一部)を入居時に支払っているということになります。
つまり、想定居住期間より短い期間で退去となった場合は払いすぎている家賃(またはその一部)の金額が原則戻ってくるということになります。 これは老人福祉法の改正で入居時費用の内訳がより明確になり、お客様からの透明性が増しました。
とは言え、入居時費用は、前述「老人福祉法の改正」で記載の通り、純粋に家賃(またはその一部)×想定居住期間だけでなく、介護費用や食事費用・その他生活支援サービス費用なども含まれるホームも多く存在します。また想定居住期間に対する考え方も各社で異なります。また透明性を増したことにより、以前は吸収出来ていた費用が運営会社側で吸収できなくなり、その分を追加でお客様から徴収するケースもあります。
費用は、老人ホームを検討する上でも非常に重要なポイントです。入居を検討する際は契約書・重要事項説明書をしっかり読み理解することが重要です。
何より私達のような老人ホーム・高齢者住宅のプロフェッショナルをうまく活用することで、より良い選択が出来ると思います。

参考文献

老人福祉法

この記事の筆者

蜂須賀 尊之

株式会社LIXIL住生活ソリューション シニア事業責任者

1966年 兵庫県生まれ

1989年 トーヨーサッシ株式会社入社
2003年 介護付マンション事業の企画担当となる
2006年 住生活グループ(現LIXILグループ)初の高齢者住宅・介護事業会社となる
「株式会社住生活グループシニアライフ」 立ち上げ
人事・経理・マーケティングの責任者として、会社の基礎を創り上げる
2010年 レジアス百道支配人、福岡3拠点統括責任者
介護現場に改善手法(QC活動)を導入・サービス品質の見える化を促進
2013年 拠点を超えた人事交流を推進
2014年 LIXIL高齢者の住生活相談センター/LIXILの居宅介護支援事業所 介護計画百道 開設
2015年 東京・福岡全7拠点統括責任者
2016年 株式会社LIXIL住生活ソリューション着任 シニアホームなび開設