サービス付き高齢者向け住宅の「銀木犀 鎌ヶ谷」は「看取り」の実績の多い高齢者住宅として知られています。所長の松丸様にその経緯を伺いました。

松丸『もともと看取りをやるということで銀木犀はスタートしていません。あくまでも高齢者の賃貸住宅ですから。しかし、あるとき元看護師のご入居者が、「ここで死にたい」とおっしゃった。正直その時は戸惑いましたが、その方が「死に方を私が教えてあげる」と言って、スタッフを導いてくださったのです。当初はよちよち歩きでしたが、今や、銀木犀での看取り率は76%、特養と同じ水準です。』

銀木犀での看取り

『考えてみれば、高齢者の住宅というのは、賃貸であっても、家を売却されて、終の棲家として入ってこられる方もたくさんおられます。それこそ、“覚悟を決めて”。我々は、そのお気持ちに応えていかなければいけない。やり方がわからないなんて言っている場合じゃないんです。そして、私もこの鎌ヶ谷の所長になってからは28名の方をお送りしました。』

『社長の下河原が言っていますが、看取りの場は、病院から高齢者住宅へと移り変わるべき時代であると。病院は人が元気になる場所であって人が死ぬ場所ではない、と、その元看護師の方がおっしゃっていたとおりです。古来日本人がそうしてきたように、生活の延長線上に死がある文化が常識であって、生活の場ではない、治療する場である病院で最期を迎えることは不自然なことだという常識に変わっていくべきだと考えています。』

『お孫さんが立ち会うこともよくあります。もうそろそろ、というときに、植物が枯れるように、お食事がとれなくなってくる、いよいよ呼吸も変わってくる、毎日のようにご家族やお孫さんが入れ代わり立ち代わり、最後は手を握りながら亡くなっていく。もちろん、必ずしも、ドラマで出てくるようなタイミングで息を引き取られるわけじゃないですが。』

何よりも大切な「ご本人・ご家族の覚悟」

--自然な死を迎える、銀木犀での看取りという選択について、ご家族にどのように話されていますか。

『まぢかにきている高齢者の方と死について話をするというのは、日本はタブー的なところがたくさんあって、死ぬときどうなるのか、死んだあと自分がどういうふうに送ってもらえるのか、本当はみんなそこがすごく心配なのに、そういう会話をしないということが多いと思います。

つまり、人生の最期をどう迎えるかについて、本人も家族も意識醸成が十分でない、ということです。病院は治療する場合ですから、可能性が0じゃない限り、かならず延命はどうしますかと聞きます。病院にそう言われると、よほど、その前にお父様かお母様かで経験をされている方でなければ、やはり悩みますよ。

私は、これまで銀木犀でみてきた経験、ご家族から聞いたお気持ちを、新しくご入居される方には必ず話すようにしています。こうしたほうがあとあとこういう気持ちになれる、こういうことにならないで済む、ということを。もちろん選択は、ご本人、ご家族です。それは私が決めることではない。でも、お話をしますと、もうみなさん、それでいいです、とおっしゃいます。

高齢者住宅おける看取りで大切なことは在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション、高齢者住宅介護職員の情報共有とコンセンサス、思いやりの連携です。そしてなによりも大切な「本人・家族の覚悟」なのです。』

できることを奪わない、あたりまえの生活をサポートする

----銀木犀鎌ヶ谷に伺うと「ご入居者が主役」ということが、すごく伝わってきます。スタッフの方はたくさんいるけれど、そう感じるのです。スタッフにはどのように会社の考え方を伝えていますか。

『銀木犀の生活では、できることを奪わない。洗濯できる人は洗濯する、ご飯食べに行く人は行く、飲めるひとは飲む、食べる人は食べる、それが本来の今までの暮らしだったわけですよね。銀木犀は、見守られながらそういう生活を送って、ご本人の残された余生を楽しく過ごしたいという方のための住宅です。鍵を閉めたり、食べたいものを食べられない、飲めない、出かけられない、タバコが吸えない、というのは拷問と同じです。もちろん、自由にしていただくことで、リスクもあります。それでも、リスクはご理解のもとで、楽しく生活したいというご希望なのかどうかを初めの段階できちんとお話しさせていただきます。』

『社長は、職員に「もっとご入居者に役割を担ってもらって、できることは本人にやっていただくように」と言っています。それが「自立支援」なんですよ。根本は、自立支援といえばそうですが、もっとシンプルに、人が人として部屋を借りて、そこで自分ができる生活を当たり前のようにしてくために、我々がどうサポートしていくかということを職員に伝えています。』


次回 Part2では、銀木犀での「楽しい暮らし」にスポットを当ててご紹介します。12月28日掲載予定。お楽しみに。

参考文献

下川原忠道氏ブログ「忠道通信」http://silverwood0604.blog90.fc2.com/

この記事の筆者

荻野 百合子

シニアホームなび 運営事務局