2000年に介護保険法が施行され、介護は措置から契約(介護サービス)へ変わり、お客様が自由に選択できるようになりました。
そしてさまざまな民間企業が介護の業界へ参入してきました。
しかし、介護保険制度は3・5年周期で報酬・制度の見直しがあり、そのたびに新しい価格、新しいサービスが追加され、介護業界で働く人でさえも正しく理解している人は多くないのが現状です。ここでは老人ホームを運営してきた経験からお客様から誤解が多かった項目について出来るだけわかりやすく解説して行きたいと思います。

サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)って?

サービス付き高齢者向け住宅と聞いて、多くの方は以下のような印象を持たれるではないでしょうか?

①介護などのサービスが付いている
②有料老人ホームより安い
③高齢者のための住宅

この3つについて、はっきりと間違っているとは言い難いのですが、合っているとも言えません。一つずつ解説していきたいと思います。
まず、①のサービスについてです。
サービス付き高齢者向け住宅に義務付けられているサービスは「安否確認・生活相談」の2点です。介護・生活支援などのサービスは義務付けられてはいません。
しかし、実態ベースでは下グラフの通り、介護系の事業所が併設されているケースが多く、グラフにある介護サービスが1つ以上併設されているサ高住は81.7%にのぼります。つまり大半は介護・生活支援といったサービスが付いていますが、裏を返すと20%弱のサ高住には介護・生活支援サービスはついていないので注意が必要です。
次に②の費用についてです。
これは誤解シリーズ第4弾で解説させていただいた通り、有料老人ホームとの価格差は同じ条件であれば、ほぼありません。(注:サービス付き高齢者向け住宅では建築費に一部補助(税金)が出ていますので家賃が若干安い傾向にあります。)
最後に③の高齢者の為のですが
これはその通りで、サービス付き高齢者向け住宅の制度は、「高齢者の居住の安定確保に関する法律」によって規定されているもので対象は高齢者ということになります。ただし、ここで言う高齢者とは60歳以上の方を指します。(40歳以上60歳未満の方について一部例外あり)

まとめますと、サービス付き高齢者向け住宅は、介護などのサービスが大体付いている高齢者のための有料老人ホームなみの費用の住宅ということが出来、限りなく有料老人ホームに近い住まいと言えます。

サービス付き高齢者向け住宅の目的は違った?

実態として限りなく有料老人ホームに近いサービス付き高齢者向け住宅は、なぜ誕生したのでしょう?
誕生の背景やその目的について少し触れたいと思います。
サービス付き高齢者向け住宅は、前述の通り「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に規定されています。この法律の狙いが第一条に書かれています。

(目的)
第一条
この法律は、高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスの提供を受けることができる良好な居住環境を備えた高齢者向けの賃貸住宅等の登録制度を設けるとともに、良好な居住環境を備えた高齢者向けの賃貸住宅の供給を促進するための措置を講じ、併せて高齢者に適した良好な居住環境が確保され高齢者が安定的に居住することができる賃貸住宅について終身建物賃貸借制度を設ける等の措置を講ずることにより、高齢者の居住の安定の確保を図り、もってその福祉の増進に寄与することを目的としています。

わかりやすく言うと、高齢者が安心して幸せに長く暮らせる住宅を作りましょう。
そのために
・住宅の制度(仕組み・要件)を作りましょう
・数を増やす手を打ちましょう
・長く住めるような手を打ちましょう
ということになります。

ではなぜ、高齢者に限ってわざわざ安心して幸せに長く暮らせる住宅の仕組みや建築の促進をする必要があったのでしょうか?この背景には、高齢者という理由で住宅を借りられないケースがあるということがあげられます。(高齢者を理由に入居を拒否されるケースは今でもあります。)また、その高齢者は今後さらに増えていくことがわかっています。こういった背景を受けて、高齢者が安心して長く幸せに暮らせる住宅を国として増やして行こう・行かなければ、となり、それが今のサービス付き高齢者向け住宅というわけです。

このようにサービス付き高齢者向け住宅の本来の目的は、高齢者が入居拒否されることなく安心して継続して暮らしていける住まいの確保にあるのですが、前述の通りサービス・費用ともに有料老人ホームと差がなく、結果として一般賃貸住宅よりも高額となり、一部の高齢者の特別養護老人ホームや有料老人ホームの代替住宅になってしまっているというのが現実です。
ただ、下グラフの通り、サービス付き高齢者向け住宅の入居率は有料老人ホーム(86.6%)より高く、ニーズがあるというのも事実です。

これからの高齢者向けの住まいの方向性と選び方

本来の目的を必ずしも満たしているとは言えない現状に対して、国土交通省は入居対象を高齢者などとした新たな住宅の登録制度の創設に動き始めています。
また、サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホームなどの既存の高齢者・介護が必要な高齢者向けの住まいも増えていきます。
数が増えればサービス内容も一層多様化していき、これまでのように住まいの種別(介護付き有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅など)だけではくくれなくなってきます。
高齢者にとっては選択肢が増え、より心身の状態や生活スタイルにあった住宅を選ぶことが出来るようになるというメリットがある一方で、これまでより多い要素での検討が必要になり、その情報把握だけでも難しくなっていくことが予測されます。
だからこそ、私たち高齢者住宅探しのプロを活用していただき、良い住まい選び、その後の生活を豊かなものにしてもらいたいと願っています。

参考文献

高齢者の居住の安定確保に関する法律
老人福祉法
平成25年度有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書(有老協)

この記事の筆者

蜂須賀 尊之

株式会社LIXIL住生活ソリューション シニア事業責任者

1966年 兵庫県生まれ

1989年 トーヨーサッシ株式会社入社
2003年 介護付マンション事業の企画担当となる
2006年 住生活グループ(現LIXILグループ)初の高齢者住宅・介護事業会社となる
「株式会社住生活グループシニアライフ」 立ち上げ
人事・経理・マーケティングの責任者として、会社の基礎を創り上げる
2010年 レジアス百道支配人、福岡3拠点統括責任者
介護現場に改善手法(QC活動)を導入・サービス品質の見える化を促進
2013年 拠点を超えた人事交流を推進
2014年 LIXIL高齢者の住生活相談センター/LIXILの居宅介護支援事業所 介護計画百道 開設
2015年 東京・福岡全7拠点統括責任者
2016年 株式会社LIXIL住生活ソリューション着任 シニアホームなび開設