9月1日は防災の日でした。熊本の皆様には、一日も早く、安心して生活ができるようになることをお祈り申し上げます。
思い起こせば、東日本大震災が起こったとき、筆者の両親は都内の介護付き有料老人ホームに入居していました。当時の勤務先から実家へは電車で1時間ちょっとかかる。もし両親が実家にいたら、すぐに駆けつけることは難しかったでしょう。筆者自身にとっては、親が老人ホームにいたために余裕をもって行動することができました。
今回は、家族としての体験、そして運営側になったときの体験から、地震のときのことを考えてみたいと思います。

地震の時の対応を施設に確認しましょう

震災が起きた瞬間、両親のことが頭に浮かびましたが、施設に電話するのは一呼吸置きました。おそらく施設がもろもろの対応に追われているだろうと想像できたので、「きっと、報告しなければならないような事態があれば、連絡が来る」と信じていました。そういう信頼関係は、ホームとの間でしっかりとできていた気がします。震災のパニックが落ち着いたと思える時間帯に電話したと思います。幸い、施設は何事もなく両親は無事でした。

翌日、ホームに様子を見に行きました。家に帰れなかった職員、外回りの営業マンも勢ぞろいしていたため、普段よりも職員が多くて、心強く思ったことを覚えています。
(このように人員がたまたま多かった、というのは運が良かったかもしれません。万が一のときに人を確保するのは、実際は大変なことなのです)

ホームを運営する側の視点では、大切な親御さん、大切な職員をお預かりしているのですから、地震への備えは気にかけています。建物については、大きな建物の老人ホームは建築上の基準もあって相対的に安全なところ、と言えるかもしれません。地震発生時には、パニックにならずに、部屋、あるいはフロアの広い場所に集まって待機するよう指示があると思います。地域や建物によって事情は異なりますので、対応方法については施設の方に聞いてみてください。

災害時には、こんなことが起きる

老人ホームでの必要な対応を少し挙げてみましょう。

・医療的な対応で、電源の必要な医療器具を常時使用している方は、非常電源確保が必要です。

・地震が落ち着いたあと、インフラが麻痺している場合には、病院受診などの際、車やガソリンの確保に苦労する場合もあるかもしれません。

・食糧については、厨房に数日分の食材があるはずなので、とりあえずは確保できるはずです。水や非常用食料、高齢者向けのおかゆなどの保存食品、おむつの備蓄も必要です。(東日本大震災の時は、ちょうど被災地域に「胃ろう」用の栄養剤を生産する工場があったらしく、しばらく栄養剤が不足してしまったことがありました。)

・災害が起きてしばらくすると、施設内での衛生管理が重要な課題になります。手すりなどの滅菌をこまめにしておかないと、感染症が起きやすくなるためです。

・家具を部屋に持ち込んでいる場合、固定するかどうか、施設から話があるかもしれませんが、ご家族も留意していただくと良いと思います。

・老人ホームによっては、むしろ、地域の防災拠点になっている場合もあります。

まずは関心を持って問いかけを

上記は、東京での筆者の体験をもとにしていますが、東北や熊本など、災害の中心になった場所ではもっと大変な状況があったと思います。
また、在宅で介護を受けておられる方、街を歩く高齢者の方など、災害時に心配りが必要な方はたくさんいます。

親御さんが老人ホームに入居している場合でも、万が一の時にどこまで準備をしているかを知っておくことは大事です。そうした問いかけがあればあるほど、施設側も備えをさらに充実していくはずです。

お互いに関心を持ちつづけることが、どんなことでも重要なのではないでしょうか。

この記事の筆者

荻野 百合子

株式会社LIXIL住生活ソリューション シニア事業部 課長
ホームヘルパー2級、福祉住環境コーディネーター2級
早稲田大学卒業。
1986~2008 株式会社三菱総合研究所 勤務。 専門研究員として雇用労働・産業構造を専門に、ワークライフバランス、女性の就業等について官公庁調査業務を担当。厚生労働省 職業安定局の労働力需給推計業務を担当、独立行政法人 労働政策研修・研究機構の「労働力需給推計委員会」委員(2008~2015年まで)
2008~2013 医療系IT企業にて医療関連リサーチ業務、介護職員・看護師の満足度調査、介護施設のコンサルティングを担当。
2013~ 株式会社LIXIL シニアライフカンパニー入社。介護付き有料老人ホームフェリオ多摩川ホーム長就任、2014年より本部企画業務に従事
2016.4~ 株式会社LIXIL住生活ソリューションに出向 シニアホームなび 担当