2000年に介護保険法が施行され、介護は措置から契約(介護サービス)へ変わり、お客様が自由に選択できるようになりました。
そしてさまざまな民間企業が介護の業界へ参入してきました。
しかし、介護保険制度は3・5年周期で報酬・制度の見直しがあり、そのたびに新しい価格、新しいサービスが追加され、介護業界で働く人でさえも正しく理解している人は多くないのが現状です。ここでは老人ホームを運営してきた経験からお客様から誤解が多かった項目について出来るだけわかりやすく解説して行きたいと思います。

介護(保険)サービスは、身の回りのお世話ではない。

今回は、介護サービスに関する誤解について解説したいと思います。
(ここには超高齢社会である日本の介護が抱える大きな課題の根っこも潜んでいると筆者は考えています。)

みなさんは、「高齢者の身の回りのお世話=お手伝いさん=介護サービス」と考えていませんか?

介護保険法の第一条、目的について以下のように書かれています。

(目的)
第一条  この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

要するに介護サービスは、「出来る事に応じて、自立した日常生活を営めるように提供するもの」つまり「出来ない事を支援すること」ということです。
身の回りのお世話(お手伝いさん)が日常生活に必要なもの・ことや身辺の面倒を丸ごと行うことを意味するのと比較して、介護サービスはその一部でということがわかります。(イメージ図)

自立した日常生活を支援するということ

では、介護保険法で言う自立した日常生活とはどんなものでしょう?
日常生活は、立つ、歩く、膝を曲げる、片足立ちする、座る、ものを掴む、声を出すという基本的動作を組み合わせたり応用して、ダイニングに移動する、食事をする、衣服を脱ぐ、歯を磨く、顔を洗う、会話をする(=日常生活動作)ことで成り立っています。
つまり、介護を必要としている方は「日常生活動作の中で支援が必要な動作を把握し、必要な程度に応じた支援(=介護サービス)を提供する。」ことで自立した日常生活が営めると言っているわけです。

介護サービスを提供する側としては、自立した日常生活を営むために必要な程度に応じた支援とは何かを正しく把握することが重要で、その手段として、介護度の認定調査票(基本的動作と日常生活動作を段階で評価し、さらに日常生活自立度を9段階で評価、認知症を患っておられる方の自立度を8段階で評価)の活用であったり、日常生活動作の機能的評価を数値化するバーセルインデックスや機能的自立度評価表(Functional Independence Measure 略称FIM)などで、定期的に支援が必要な動作を把握している介護付有料老人ホームもあります。

介護保険における介護サービス

これまで述べた通り、介護サービスは身の回りのお世話ではありません。
介護サービスを受ける方がサービス対価の1割または2割の負担で済んでいるのは、
介護保険が、税金50%、被保険者(40歳以上の国民)の保険料50%で成り立っているからです。
税金や国民のみなさんのお金を使っていますのでサービスを受ける人もサービスを提供する人も
介護保険における介護サービスを正しく理解する必要があります。

冒頭で話したように、超高齢社会である日本の介護が将来にわたって抱える大きな課題の根っこも潜んでいます。
誤解が解ければ、理解が進めば解決する話ではありません。理念と現実のギャップなど、またの機会に詳しく解説したいと思います。

参考文献

介護保険法、介護認定調査票

この記事の筆者

蜂須賀 尊之

株式会社LIXIL住生活ソリューション シニア事業責任者

1966年 兵庫県生まれ

1989年 トーヨーサッシ株式会社入社
2003年 介護付マンション事業企画担当となる
2006年 住生活グループ(現LIXILグループ)の高齢者住宅・介護事業会社となる
「株式会社住生活グループシニアライフ」 創設メンバー
人事・経理・マーケティングの責任者として、人事制度・社内規程・HPなど会社の基礎を創り上げる
2010年 レジアス百道支配人、福岡3拠点統括責任者
介護の現場にQC活動を導入・サービス品質の見える化を促進
2013年 拠点を超えた人事交流を推進
2014年 LIXIL高齢者の住生活相談センター 西新店 開設
LIXILの居宅介護支援事業所 介護計画百道 開設
2015年 東京・福岡全7拠点統括責任者
2016年 株式会社LIXIL住生活ソリューション着任 シニアホームなび開設